DJという職業から体のケアを考える

DJ EDM
photo : EDMcrowd : license

21世紀になって突如大金を稼ぐようになった職業の一つ、DJ。

その中でもトップDJ達は目まぐるしく世界を旅し、各国のフェスで転々とプレイ。莫大な収入を得るようになりました。

2016年度、トップオブトップDJのカルヴィン・ハリスの年収はなんと63億円!

そんな華やかなDJ業界に身を置くロンドン在住のBenjaminさんが来院されました。

様々なイベント、フェスへ招かれ定期的に来日しているようで、今回は都内某有名ホテルのプールサイドで行われるサマーパーティのホストDJとしての来日です。

普段から体調管理のために定期的に鍼灸治療を受けているそうで、私が以前勤めていたロンドンの鍼灸院の先生からのご紹介で来院されました。

特にここ数ヶ月は、慢性的な肩甲間部のコリ感や首の違和感に悩まされているとのことでした。

慢性的な肩甲間部のコリ感の原因とは?

私なりに肩甲間部のコリ感の原因は、大きく二つに分けて考えています。

不良姿勢からくるアライメントの問題

巻き肩傾向の方やPC作業を多く行ったりする方に多くみられます。

アライメントの観点から筋膜バランスをみていくと、自覚症状を強く感じるポイントというのは、伸ばされて固定されている箇所にコリ感やハリ感を最も感じやすいというのが特徴的です。

この場合、本当の原因は他の部位にあり、結果として肩甲間部に症状が出ているに過ぎません。

思索する、熟考する、などの考える作業による負荷

思索や熟慮など、根を詰めるように集中して物事に取り組む傾向がある方は、肩甲間部でも特に右側により強いコリ感を感じます。

「根を詰める」すなわち物事に一心不乱に取り組むことを、東洋医学において「魂を詰める」とも言い、肝の気の流れと関係があります。

良くも悪くも没頭して取り組むことは、肝の気の消耗、停滞を招きます。

肝の気の流れの症状は右側に出やすい傾向にあり、腹診をしてみると右側の肋骨下部も硬くなっています。

日本漢方ではこの右側の肋骨下部の硬さを胸脇苦満といい、柴胡剤という漢方薬の適応症状に当たることを先人たちは見出しています。

胸脇苦満をロルフィングの観点からみると

この胸脇苦満をロルフィングの観点より説明すると、右側の横隔膜が硬く可動性が落ちることにより、右横隔膜ー右胸郭ー右肩甲間部のユニットの機能不全が起き、浅い呼吸も手伝って、より右側の肩甲間部のコリ感を強く感じることになります。

Benjaminさんは日頃から、音楽へのクリエーションを高めるため、建築や思想、文化や精神性などの探求に余念がなく、さらにここ2年ほどは人の内的成長に関わるような心理学的な関わりを仕事以外にも行っているそうです。

日中常に考え事をしているBさんは、典型的な2のタイプだと考えられます。

施術は、肝の気の流れを促すために手足のツボを用い、横隔膜の緊張を手技にて緩め、肩甲骨や首の緊張部位を鍼にて丁寧に解いていきました。

施術のご感想

 

Over the past few months I have had some ongoing back pain, but after the session I felt a sense of relief that has put everything back into shape with the pain gone. I can now enjoy freedom of movement.

この数ヶ月間、背中の痛みが続いていたが、施術を受けた後は、痛みがなくなって元の状態に戻って楽になった感じがする。今は、自由に動けていいよ。

testimonial

 

施術を終えての感想

DJの他に音楽プロデューサーとしても活躍しているそうで、独自の都市論などを伺っていると、テクノやEDMという流行のスタイルを用いた表現者ではありますが、Benjaminさんに関しては音楽という表現を介した現代の思索家であるような雰囲気を受けました。

「故郷デンマークのコペンハーゲンと東京は表面的には対照的な都市だけど、深層に流れる精神性は『シンプルかつ機能的』である」という解釈には妙に納得させられるものがありました。

昨今では、世界を股に掛け活躍するDJ達のあまりにも過酷なスケジュールへの警笛が鳴らされるようにもなりました。

タイトなスケジュールと異常なまでの移動距離により、心身を蝕まれてしまう人も出てきました。

人々をトランス状態に導く現代のシャーマンは、皮肉にも自分自身が日常生活においてトランスという奈落にはまり込んでしまうこともあるのでしょう。

Benjaminさんを見ていて感じたのは、「健全な精神は健全な身体に宿る」ということであり、身体のケアを怠らないことが、プロとして長く継続して良いクリエーションを発揮していく秘訣なのだということです。

日本へは様々なイベントでDJとして呼ばれることが多く、定期的に来日しているということですので、次回お会い出来ることを楽しみにセッションを終えました。