鍼灸とEBM(Evidenced-Based Medicine,根拠に基づく医療)-頚椎症-
鍼灸施術は欧米でも代替医療のメインプレーヤーとして近年認知され、幅広く取り入れられるようになりました。
様々な愁訴に効果を出してきた鍼灸施術をさらに発展させるべく、科学的な観点を用いた臨床試験が各国で実施されるようにもなってきました。
目次
- 1 鍼灸関連の論文に関して
- 2 記事紹介
- 2.1 Acupuncture Relieves Neck Pain and Numbness (鍼灸が首の痛みやしびれを和らげる)
- 2.2 Acupuncture relieves neck pain and improves range of motion (鍼灸が首の痛みを和らげ、可動域を向上させる)
- 2.3 Acupuncture Found Effective For Cervical Spine Disorders (鍼灸による頚椎症への効果性を発見)
- 2.4 Acupuncture Soothes Cervical Spinal Nerves, Stops Pain (鍼灸が頚椎神経の症状を鎮め、痛みを緩和する)
- 3 まとめ
鍼灸関連の論文に関して
医療に関する情報を科学的に集積しているデータベースに、Pubmedというものがあります。
Pubmedは医学・生物学文献を中心に世界の主要な医学系雑誌に掲載された論文の書誌情報を調べることができるデータベースであり、「acupuncture」と検索すると2018年1月現在で27,392件の論文がヒットします。
今回は頚椎症に関係のあるエビデンスが含まれた4つの記事を紹介します。(やや臨床家向けの内容になります。)
各記事とも要約のみを抽出しました。更に詳しく知りたい場合は、リンク先に付記してある参考文献をご参照してください。
記事紹介
Acupuncture Relieves Neck Pain and Numbness
(鍼灸が首の痛みやしびれを和らげる)
ケース1
温針を行うことにより、痛みやしびれなどに対して、92.05% の効果性が見られた。
また血液検査の結果により、TNF-a、IL1β、IL6値の改善も確認された。
ケース2
電気鍼療法は、NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)よりも短期的にも長期的にも優位な効果性を確認できた。
短期にて寛解:電気鍼療法=70% ,NSAIDs =40%
長期的に改善が見られる :電気鍼療法=87% ,NSAIDs =68%
あまり効果が見られない :電気鍼療法=9人 ,NSAIDs =25人
無効 :電気鍼療法=2人 ,NSAIDs =14人
Acupuncture relieves neck pain and improves range of motion
(鍼灸が首の痛みを和らげ、可動域を向上させる)
ケース1:
鍼灸施術と漢方薬の併用は96.67%の改善率、非ステロイド性抗炎症薬は83.33% の改善率が確認された。
鍼灸施術と漢方薬の併用が、非ステロイド性抗炎症薬よりも効果的との結果が得られた。
ケース2:
入院、手術、術後といった周術期における電気鍼療法が、頚椎手術時の全身麻酔管理や術後疼痛管理への効果をあげている。
ケース3:
鍼灸施術が頚椎の可動域の改善と痛みの軽減に効果的との結果が得られた。
鍼灸施術と漢方薬の併用もまた、長期的な効果を期待できる。
Acupuncture Found Effective For Cervical Spine Disorders
(鍼灸による頚椎症への効果性を発見)
ケース1
通常の針よりも、長針を用いた方がより効果的との結果が得られた。
通常の針(1.5inch=3.8cm):改善率80.6%
長針(3inch=7.6cm):改善率95.3%
ケース2
椎骨動脈性頚椎症に対して、特殊針法と電気鍼療法のコンビネーションは、マンニトール点滴や紅花注射液などの薬物療法よりも効果的との結果が得られた。
特殊針法と電気鍼療法:改善率93.3%
マンニトール点滴や紅花注射液:改善率76.7%
Acupuncture Soothes Cervical Spinal Nerves, Stops Pain
(鍼灸が頚椎神経の症状を鎮め、痛みを緩和する)
ケース1:
頚椎症に対して、鍼灸と灸の併用により、97%に改善が見られた。その内、64%が完全寛解。
今回の上記4つの記事では、電気鍼療法や耳針、温針や長針、漢方薬との併用、など様々な角度から研究が取り上げられていました。
これらの論文なども参考に、当院では経験や感覚のみに頼るのではなく、科学的な知見も参照し施術を行っています。
変形性頚椎症、頚椎症性神経根症、頚椎椎間板ヘルニアなどのしびれや痛みの強い頚椎症に対して、当院では電気針療法とロルフィングを併用することにより高い効果を得られています。
整形外科を受診した際の診断名は様々ですが、脊髄の圧迫による頚椎症性脊髄症の症状さえ出ていなければ、頚椎症の病態は多くが改善可能です。
まとめ
インターネットに公開されている情報は玉石混交です。
医療系のキュレーションサイトにおける問題も昨年は発覚しました。
厳密な観点からみると、鍼灸のEBM(根拠のあるデータに基づいた医療)分野における研究デザイン精度はまだ決して高いとは言えないという現状もありますが、インターネットに公開されている様々な情報よりは、pubmed掲載の論文は信頼できる情報ソースと言えるかと思います。
科学とは日々アップデートされていくものです。
そして、現在の科学のモノサシで捉えることができる事象のみがデータとして抽出されることになります。
世の中の現象は現代の科学ではまだまだ分からないことが多く、「鍼灸施術はなぜ効果的なのか?」というブラックボックスの解明も今後に期待したいところです。