Sさんとのロルフィングセッション 1〜3

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以前からかれこれ1年ほど鍼灸治療をさせていただいていたSさんとのロルフィングセッション。
10ヶ月に渡るセッションのテーマは「体の断捨離を行いたい」というものでした。

ロルフィングにおける断捨離とはいったい何なのか?

詳細をご紹介させていただきます。

セッション 1〜3 :スリーブ

ロルフィングはセッション1〜3で、まずはスリーブと言われる表層から中層における部位へのアプローチを行います。

施術者としても、これまで行ってきた鍼灸治療とは異なる視点から身体を診て、またフォーカスするポイントを意識的に変えることとなります。

ロルフィングの4つのコンセプトをもとに、スリーブにおけるSさんのポイントをまとめました。

4つの
コンセプト
Naoki Rolfing® Studioにおける
コンセプトの解釈
Sさんの事例
Structure 「筋膜が形作る体」  肩と膝過伸展
Coordination 「盲点となっている感覚の再学習」  足裏と喉
Perception 「身体への気づき方を高めること」  外側の空間認識
Meaning 「変化の先に新たな意味を見出すこと」  体の断捨離

 

「何を」ロルフィング10セッションの中で得たいのか、「何が」目的なのか。
それは人それぞれに異なります。

ロルフィングを受けていただく当初の目的というのは10セッションへのきっかけであり、その目的を達成していく過程における心身の変化や気づきこそが重要だと考えています。

お一人おひとりのセッションを受ける目的に寄り添いながら真のニーズを見出すことが、ロルフィングセッションにおける重要なポイントであるということです。

またロルフィングでは、主に「筋膜や骨格に働きかけるアプローチ」と「身体の使い方や盲点となっている感覚の再学習を促すアプローチ」を並行して行います。

筋膜の連鎖のパターンや筋膜の制限を解除することは、同時に身体の使い方や感覚の再学習のためのきっかけ作りにもなるためです。

例えば、セッション1で焦点を当てる「横隔膜」は無意識の呼吸のパターンが最も反映される箇所であり、姿勢へも深く関わる部位となります。

Sさんは横隔膜の緊張に左右差が生じていたため、手技による横隔膜のリリースと併せて、通常では意識しづらい肋骨側面や背部後面の感覚の活性化を行うことで、身体感覚の偏りを是正しました。

一般的に、幼少期から行っているスポーツなどは、身体特性や動きのパターンの形成に強く関わります。
Sさんも長く水泳をされていたこともあり、呼吸時における息を止める癖などもセッションの途中で自覚されていくこととなりました。

空間:スペース

ロルフィングにおいて、「空間:スペース」という考え方は重要なコンセプトの一つです。

体の内側に十分な空間があるのかどうか、身体の外側の空間を適切に認識できているのかどうか、が重力下で快適に身体を位置付けるためにはとても重要になるためです。

Sさんの場合は、身体の後ろ側の空間認知に少し偏りがあり、頭の後ろ〜頚や肩の後ろの空間を認識することにより、肩のポジショニングが劇的に変化しました。

これは、Perceptionの観点からは、頭や首の後ろの空間を適切に認識することにより、結果として頭のポジションが微妙に調整され、そのシグナルが頚の奥にある平衡感覚を調整する受容体から脳へと伝達されることとなり、体のバランスを劇的に変えることとなります。
意識的に体のバランスを変えることは至難の技ですが、空間を適切に認識するというキューを介することで、より自然に体が重力ラインに適応してくれるという身体の叡智に驚嘆せざるを得ません。

また、Structureの観点である、筋膜繊維のつながりで考えて見ると、頭皮〜脊柱起立筋〜ハムストリング〜ふくらはぎ〜足底へと、筋膜繊維の連鎖である体の後面のラインは上から下まで途切れることなくつながっています。
頭や頚の後ろの空間を適切に認識することとは、すなわち該当部(頭や頚の後ろ)の皮膚感覚を活性化させることとなり、縦断している筋膜繊維全てのつながりを活性化させることとなります。

このことにより、PerceptionとStructureの新しい回路を形成できたことが、肩のポジショニングの劇的な変化につながったのでした。