トライアスリートへのロルフィングセッション Vol.1

スイマー
photo : Lisbon Triathlon : license

ロルフィングセッションを始められたトライアスリートの方の経過報告です。
(ご本人の了承を得ております)

48歳 男性 会社員
トライアスロン歴3年。負荷の掛かる練習をする度に、腰や下肢の故障を繰り返している。
日常生活でも知らず知らずのうちに力が入っていることが多く、全身の力み癖を自覚している。
現在はトレーナーやコーチの指導を受けながらトライアスロンのトレーニングを行なっている。
腰や足首の硬さの改善、余分な力が入らないような効果的な身体の使い方を日々試行錯誤している。

ロルフィングのセッションでは、動きの改善や競技動作の向上などのスポーツ愛好家の方に適したセッションから、仕事面での生産性の向上というビジネスマンの方に適したセッションなどなど、様々なニーズに適したセッションを提供させていただきます。
特にスポーツ領域でのセッションでは、動きの制限になっている膜の癒着を取り除き、コアでの伸びやかな動きを養うという身体の使い方を再学習することに焦点を当てて行います。
今回のTさんの場合、癒着による動きの制限になっている箇所はそこまで多くないと見受けられ、力み癖に象徴されている身体の使い方の癖が故障に深く関わっていると判断しました。
そこでロルフィングにおける効果的な身体の使い方のエッセンスをしっかりと再学習してもらうことが、パフォーマンスの向上に直結していくと考え、セッションを開始しました。
 

セッション.1 胸郭(呼吸)と骨盤

Tさんの場合は、身体の使い方の癖の再学習がセッションのメインテーマになるのでAMP(Active Movement Participation、施術に合わせて受け手の方にもゆっくり動いていただく)が特に有効に働きます。
それは受動的に施術を受けているだけよりも、AMPに伴う微かな動きを実践してもらうことによって、これまでの動きの癖が根付いている受容器や神経系に効率良く働きかけることができるためです。
セッション1では胸郭(呼吸)と骨盤に焦点を当てています。
AMPによるアプローチを行なっていると、どの動きの局面でも体を過剰に縮めて使い過ぎる傾向が見られました。体全体の動きを調節するシステムの一つが首の後ろの筋肉群にあることから、セッション中に行うAMPや日常生活でのストレッチ・練習での体幹トレーニングの際に、脱力連鎖のスイッチである首の使い方の再学習を行いました。
また、どの動作に際しても身体を縮め、「努力する・頑張る」という意識により動きを作っていることが力み癖の要因になっているので、これまでとは異なる背骨の使い方と動きの意識作りに取り組みました。
セッション.1の後には、胸郭と骨盤の連動に関して、新しい動きの感覚を伴った脱力を感じて頂けたようでした。
 

セッション.2 足から全身への連鎖

セッション.2では足から全身への連鎖に焦点を当てています。
セッション.1で行った首と背骨の新しい使い方を、さらに下肢へと拡張します。
特にTさんは右足首の硬さを自覚しており、ランニング時の左右の接地の違いをコーチによく指摘されているとのことでした。
右足の腓骨筋群に硬さが見られたので、筋膜の癒着の制限を取るようなアプローチを行い、その後筋膜や関節の動きの改善を促しました。
さらに、背骨を伸ばすように使う意識作りを深めるために、腹〜腰周りの部分に新しい動きを取り入れました。
力み癖のあるTさんに必要なことは、外側の筋肉主導で動きすぎない、頑張ることにより固めすぎないことが重要になります。
内側の骨や筋膜で伸びやかに動きを作ってもらうという新しい動きの意識作りの定着が要点になります。
 

セッション.3 上半身と下半身の繋がり

セッション.3では上半身と下半身のユニットの繋がりを深めます。
右の腸骨筋や左の前鋸筋などの筋膜の癒着により動きの制限が見られる部分に対するアプローチを含めながら、身体を大きなユニットとして連鎖して動かせるように、部位と部位の関係性に対してのアプローチを行います。
セッショ1と2を通して、新しい身体の使い方を理解して頂けたようなので、理解を体得に落としこめるように取り組んでいきます。
具体的には外側の筋肉主導で動くのではなく、インナーセンスを養いながら、コアから伸びるように身体を使うような感覚です。
Tさんの場合、筋肉の強さや体幹部の安定性は十分にあります。
ですので、余分な力を入れずともダイナミックなパフォーマンスに繋がるように、動きの癖が根付いた神経系に働きかけていきます。
これは自分の身体をどう認識し(Body Mapping)、どのような意識の元に動いているのか(Brain Mapping) に関わってくる内容です。
動きのコツといわれる部分は、 身体の認識の仕方(Body Mapping)と、認識した身体のパーツを連鎖して動かしていくためのより効果的な意識 / イメージ作り(Brain Mapping)の2つの要素に分けられます。
Tさんの場合は、外側の筋肉主導の過剰な力みを伴った動きではなく、伸びやかに脱力を伴った身体の使い方の再学習を加速させるために、 Body Mappingと Brain Mappingを応用して行います。
 
セッション.3までを終えて、腕の内側に頚からのしなやかなひもの様なつながりを感じることと、スイムの際に背骨の伸びが感じられるようになってきている、というフィードバックをいただきました。
初めのうちは、力むという筋肉活動の実感が、動きの推進力につながっているという安心感へと結びついていたようです。
そこの部分を、力みではなく内側から伸びやかにという意識を伴った身体の使い方に焦点を当て続けてもらえれば、ダイナミックかつエコロジーな動きの体得が進んでいくと考えられます。
新しい使い方の意識が少しずつ身体に落とし込まれているので、セッション4から始まるコアのセッションでも、動きの質をさらに変容させていくことができるでしょう。