養生×テクノロジー:養生の最適解を導き出すために
養生という言葉を聞くと、どのようなイメージが湧いてくるでしょうか?
定期的な運動、規則正しい睡眠、お酒を控え、よく噛んで食べる、などの生活習慣に関わることではないでしょうか。
養生とは、生を養うこと。
そして病とはあらかた不養生から生まれます。
人間は怠惰なもので、不養生を直視させられるような体験、つまり病を患ったり、心身の不調をきたすまでは、日々の生活習慣を自戒し見なおそうと一念発起することは難しいように思います。
そのような人生の転機が訪れない限り、重い腰を挙げられないのが人間の性でしょう。
30-50代の養生観
30-50代にとっての養生観とは何でしょうか?
30-50代では、それまでと家族構成が変わったり、仕事の面でも働き盛りを迎える頃かと思います。
まだまだ無理が効く世代であるが故に、仕事量の増大を体力で乗り切ってしまうのが実状でしょう。
この世代における養生観は、病を軸としたものではなく、生産性のある仕事を効率よく行うため、もしくは前向きに家事育児に取り組むため、と主眼を変える必要があります。
それは、生産性のある仕事を行うためのストレスマネジメントや、クリエイティブなアイデアを生み出すためのマインドを整えること、また家事育児に主体的に関わるために心身を整えること、などと言い換えることができます。
新たな養生観に基づき、ライフスタイルの見直しを測ることは、60代以降の健康への投資にもなります。
ただ、そうはいっても変えられないのが生活習慣であり、多くの場合は、健康への悪影響が出て初めて、そこに取り組まざるを得ない状況になります。
生産性やクリエイティビティ、主体性のためにという、抽象的かつ切迫していない目的では人間はなかなか動機付けされません。
また睡眠・運動・食事などを律していくのは、仕事で疲れているビジネスマンにとっては、無理だという声も聞こえてきます。
「ただでさえ忙しいのに、今以上に体に良いことをする時間がありません。」
「運動や睡眠や食生活が大切なのは分かりますが、現実的に難しいですね。」
人体のリズムを可視化する
○○時間残業など現実的に不可能な場合は除き、多くの30-50代にとっては、運動や睡眠や食生活の優先順位を上げることこそが、仕事の生産性や効率化、家事育児に主体的に関われるようになるということが分かってきました。
運動や睡眠や食生活の軽視が、どれだけ仕事の生産性を下げるのか、どれだけ1日のエネルギーの回復を妨げているのか、どれだけ感情のアンバランスをもたらすのか、実体験として感じられた経験もあるかとは思いますが、それが実際に可視化できるようになりました。
テクノロジーの発達により、人体のリズムをトラッキングできるようになったためです。それも安価で簡便に。
例えば、一日の自律神経の揺らぎをトラッキングすることにより、現在の生活習慣における活力や睡眠の質を24時間のグラフとして把握できるようになりました。
これまでの癖である生活習慣から育まれている毎日をデータとして客観視することこそが、重要だということです。
慣れ親しんだ毎日は、感覚として当たり前のものとなってしまっています。
運動不足からもたらされる活力の低下や慢性的な睡眠不足からくる疲労の蓄積があったとしても、それが何年にも渡る日常になっていると麻痺して気づけなくなっています。
毎日の生活習慣がもたらす影響を直視することから、全てが始まるのです。
テクノロジーとの付き合い方
東洋医学の師匠からは、患者様に養生指導を実践していただけるようになれば一流の臨床家である、と言われ続けてきました。
その本意は、施術者が日々技術の研鑽を重ねるのは当然のこととして、患者様に対して施術に来られていない日々の生活の質の改善をどれだけ意識付けできるのかで、施術効果が大きく変わってくるのだということです。
テクノロジーの進化により、個々人のレベルで人体のリズムを可視化できるようになることは、患者様の日々の養生への意識づけを確実に変革するものとなるでしょう。
また、これまで何となく体に良いからと言われていた様々な健康法が、生活を向上させるための確実な方法論として、最適解を見出せるようにもなってきたということです。
それはつまり、誰でも自分の人体リズムを把握できるようになった時代において、より良い毎日を過ごすためにテクノロジーをどう利用するのかも、個々人に問われるようになってきたということです。
テクノロジーの時代は全てをデータや数値化していこうという流れになっていきます。
これからの時代の勘どころは、データを使うのはいいが、データに囚われないようにしていくことだとも思います。
自分の身体の声を聞くという、五感+第六感も合わせて大切にしていきたいと思っているところです。
今回ご紹介したトラッキングはHRV(Heart Rate Variability)と呼ばれるもので、ご興味のある方には、今後当治療院でも取り入れていこうと考えています。