ロルフィングセッション9:足の裏が身体を支える −X脚−

bare foot

Nさんのセッション9を行いましたので、経過をご報告したいと思います。

前回の来院から4ヶ月が経過していました。

ロルフィングのセッションを受けるのを忘れるくらい、体調が良くなっているとのことでした。

「ジムにも通い始めて以前よりも体を動かすことが多くなってきた」のも、Nさんにとっては大きな変化になっているようです。

ジムに通い始めた中で、気になっていることがあるそうです。

それはジムでストレッチのメニューを行うと、首の一部の骨の動かしづらさに気づかれたそうです。

今回はその動かしづらい首の骨と、さらなるX脚の改善を中心にセッションを行いました。

首の骨の動かしづらさの原因とは

喉の奥や鼻の奥のスペース?

首の骨の動かしづらさは、頚椎2番・3番だということが自覚症状と付き合わせて確認できました。

頚椎と他の様々な部位との筋膜連鎖を考慮し、Nさんの状態をチェックしてみると、頚椎2番・3番は喉の奥の緊張にも強く関わっていることが分かりました。

頚椎は特に、頚椎そのものの問題だけにアプローチするよりも、他の部位の影響を同時に改善した方がより効果的な結果を出すことができます。

まず、仰臥位で頚椎へのアプローチを加えながら、同時に喉の奥や鼻の奥のスペースに意識を向け、その部位の力を抜くように意識を向けていただきます。

初めは、これまで意識したことがない内側の空間へ意識を向けることが上手く体感できなかったのですが、次第に要領をつかみ始め、ある瞬間に頚椎の脱力と共に内側の感覚を完全に体感することができました。

Nさんが喉や鼻の奥のスペースを体感できた瞬間に、私がアプローチしている頚椎も同時に緩むのを確認できるのは、とても興味深い現象です。

 

掴んだ感覚を身体に落とし込む

次に、仰臥位で掴んだ内側の感覚を、四つ這い→座位→立位にて、順番に重力下の身体に反映させます。

ジムで行っているストレッチのメニューをアレンジし、内側の感覚と頚椎の2番・3番と仙骨を結ぶように、身体の使い方を導いていきます。

Nさんが体感した頚椎2番・3番と喉や鼻の奥のスペースは、人間が最も固めてしまいやすい部位の一つです。

これまでのストレッチにこの身体感覚をプラスするとすぐに、Nさんは肩の脱力も同時に感じることができました。

どのストレッチを行うときでも、この内側の部分の心地良さを感じながら行うことが、身体を機能的に効果的に身体を使うためのキーになります。

 

X脚へのアプローチ

足指じゃんけん、できますか?

次に、X脚へのアプローチを、今回は足裏の筋バランスの観点より行いました。

足裏の細かい筋肉が適切に機能しているのかどうかは、下肢のバランスを考える際に非常に重要な部分になります。

特に現代人は1日中靴を履くライフスタイルを送っており、社会人として革靴やヒールのある靴を履くことを求められる機会も多いのではないでしょうか。

靴は足指が持つ本来の機能を制限してしまう側面があります。

足指の機能を再び取り戻すことが、下肢から全身の筋膜連鎖を整える上では欠かせません。

Nさんの足をチェックしていくと、それぞれの足指を独立させて使うことが以前から苦手だということでした。

そして、実際にNさんに足指を動かしていただくと、親指を他の4指と独立させて動かすことができません。

また外反母趾もあるので 短母趾屈筋や 母趾内転筋 がほとんど機能していません。

短母趾屈筋や 母趾内転筋の機能性は、足チョキ✌を行って独立した動きができるのかどうかで確認することができます。

bare foot on the coast

このように親指が機能せずに、土踏まずのアーチも落ちた状態で立つ歩くを行っていると、その影響は筋膜連鎖を介して下腿そして太腿へと波及します。

重心は足裏の外側アーチへの加重傾向にあるため、腓骨筋群の緊張が強く下腿の外側ラインを短縮させています。

一方、足裏の内側アーチは十分に機能していないため、下腿から大腿の内側ラインは適切な張力を保てなくなってしまいます。

 

足の親指が動かせるようになると

Nさんには、まず足指の骨や筋肉の正確な構造を認識していただき、実際に親指がしっかりと独立して動かせるように、座位にてAMP(Active Movement Participation、施術に合わせて受け手の方にもゆっくり動いていただく)を用いたアプローチを行いました。

初めのうちは全く感覚を掴めていませんでしたが、徐々にコツを掴み、最終的には親指を独立して動かせるようになりました。

そして、最後に立って確認していただいた時には、「指がとても長くなった感じがします。親指が生き返った感じです。指を使うとこれまでとは重心の位置が少し違うから、不思議な違和感を感じます。」という感想を述べられました。

新しいポジションへの必要な違和感が生まれた典型的な感想です。

NさんのX脚の原因は、足裏の機能を取り戻すことを地道に行う必要があるという証拠でもあります。

 

身体感覚を養うことが大切な理由

首の内側の感覚を掴んだり、足指の感覚を養ったりと、Nさんの内的な身体感覚は当初よりも随分発達しています。

現在の感覚は、バレエやダンスなどのパフォーマンスを指向している方々にも引けを取らないものになっています。

ではいったい、なぜ身体感覚を養うことが大切なのでしょうか?

それは自己の修正能力を最大限に活用するためには、自身の身体のバランスが崩れ始めたということにできるだけ早めに気づく必要があるからです。

 

「早期発見、早期修正」

どんなことでも「早期発見、早期修正」に勝るものはありません。

身体感覚を養うことは、例えばデスクワークでの不良姿勢に早期に気づくことや、呼吸の浅さに気づき適切な小休止を挟むなどといった、早期修正のポイントを自分で見つけることに繋がります。

さらに、日常の生活の中での身体の使い方やジムなどでの身体の動かし方に意識を向けることで、怪我なくより効果的なエクササイズを行うことが可能になります。

X脚やO脚、首のコリ感やハリ感は身体からの重要なメッセージであり、これらを改善していくプロセスの中で、日常生活での身体の使い方を見直し、生活の質QOLを向上させていくきっかけをも見出すことができます。

 

次回はセッション10。

どのような形で最終セッションをまとめることができるのか、今から楽しみです。