インナーフォーム:動きの機能解剖学 –アシュタンガヨガ×ロルフィング− イントロ

Ashtanga yoga

私は、身体感覚の向上と、心と体と頭の中を整えるために、週に3日、代々木にあるアンダーザライトにてヨガのプラクティスを続けています。
ヨガの練習の中で身体感覚を養うことは、パフォーマンス向上を目指すアスリートやダンサーに向けてのセッションの際にとても役立っており、また、自分自身の身体の使い方を改善する上でもアイデアの宝庫となっています。
何を感じヨガに向き合い、何を考え施術につなげているかを、今回から数回に渡ってご紹介していきたいと思います。

二人のヨガマスター

私が練習しているのは、アシュタンガヨガのマイソールというスタイルです。
マイソールクラスの練習方法とは、各自それぞれが受動的ではなく自分自身のペースで、主体的にヨガに向き合うことができ、上級者から初心者まで同じ場を共有することができる点をとても気に入っています。
特に初心者から始めた私にとっては、上級者のリズムや息遣いを感じながら共に練習を行うことで、アシュタンガヨガをスムーズに深めることができていると感じています。

アトモ・クランティ氏

どの先生の元で学ぶかは、練習への向き合い方においても重要な点であると思います。
私が学んでいるクランティ先生は、書籍やDVDなどでアーサナマスターとして取り上げられており、佇まいや動きの美しさに目が行くところではありますが、実際の練習の場では、生徒一人一人に対する気の配り方が素晴らしく、またアーサナを深めるアジャストの安定感と繊細なタッチは、とにかく素晴らしいと感じています。
これまでも数々の施術家のタッチを日英独で受けてきましたが、クランティ先生のタッチ程人間の可能性を感じさせてくれるものには、中々出会うことはできません。
アーサナマスターとしてだけでなくクランティ先生の内面がよくわかる動画がありましたので、紹介させていただきます。

vimeo アトモ・クランティ:ヨガが日常に与えるインパクト onyourmark.jp

Richard Freeman氏

そしてもう一人、世界的に有名なアシュタンガヨガの先生の一人、Richard Freeman氏の考え方も参考にプラクティスを行っています。

アシュタンガヨガを練習している人で知らない人はいないであろうこの動画。この動画中の向かって左側の真ん中がRichard Freeman氏です。
彼の著書The Art of Vinyasaの内容がとても良く、各アーサナを深めるための、内的な感覚や微細な身体の使い方がこれでもかと盛り込まれており、まさに口伝の書といった趣です。

氏は著書の中で、一般的な筋肉の使い方や見た目のアライメントを求めるよりも、より内的な型に目を向けるように言葉を尽くしてくれています。
動きとはInternal Form(インナーフォーム)の結果として、外側の所作に反映されるものだという言説の通り、呼吸、バンダ、視線なども丁寧に取り上げてくれています。
インナーフォームは体を機能的に動かし、動きを深めるためには欠かせないものです。

アシュタンガヨガでは毎日同じシークエンスを繰り返し行い続けることにより、内側では日々異なるポイントに焦点を当てやすくなり、その結果として動きの円熟、「今ここ」の状態に向き合うこと、心の所作を学び続けることができると考えられています。

 

アシュタンガヨガの継続から見えてくる
ロルフィングとの関わり

臨床での身体感覚の向上のためにも始めたアシュタンガヨガ。ロルフィングとどのように関連付けることができるのでしょうか?

ロルフィングの観点から動きを見直す場合、

  1. どこを支えのポイントにするのか?
  2. どこを動きの支点にするのか?

の2点を特に重要視します。
これは動きの身体的な側面だけに留まらず、心のありようにも投影されてくる部分でもあります。
普段は気付き難いのですが、身体に根付いたこれまでのパターンは、日常のあるゆる面に反映されているものです。

そして、動きの改善やパフォーマンスの向上を目指していくためには、

  1. ポイントポイントを切り取って見直すこと
  2. ポイントをまとめる一段高い視点の視座

このミクロとマクロの統合を再学習する必要があります。

よく見受けられるのは、ある一定の動きや特定の部位を見直すために、筋肉単位の動かし方のみに終始してしまうという場合です。
筋肉単位でのみ動きを捉えてしまうと、体は上手く連動して動いてくれません。
見直した部位と部位をどのように調和させて動かしていくのかという一段高い視点の視座が必要になり、ユニットとして機能しシステムとして調和して動くという観点が必要になります。
これらをまとめるポイントが、ヨガの身体の見方、使い方に散りばめられています。

次回から、動きを一段高い視座でまとめるための視点を、インナーフォーム:動きの機能解剖学として、少しずつですがお伝えしていければと思います。