風邪治療と鍼灸
昔むかし、中国の漢の時代に疫病の流行に挑んだ一人の医師がいました。名前は張仲景。
彼は疫病で多くの人が命を落としていくのに耐えかね、疫病への対処法をまとめあげました。
その体系化された方法論が「傷寒論」として後世に脈々と伝えられることになりました。
「傷寒論」とは一般的な風邪症状に対しての方法論だけではなく、病がどのように変遷していくのか(どのように悪化もしくは改善していくのか)も、詳細に観察し体系化されていることから、漢方を扱う先生のバイブルとして昔も今も読み継がれています。
「傷寒論」は主に漢方薬の運用方法をまとめているのですが、その中に鍼灸治療を併用している部分もあり、風邪治療に対してもとても参考になります。
本日は風邪治療に対する鍼灸治療を取り上げてみたいと思います。
先日、妻が風邪気味の症状を発症し、3~4日で治りかけたと思った頃、ぶり返してしまい、ひどい鼻づまりと頭痛、発熱もしてしまいました。
脈は風邪症状に特有の浮数(表面にのみ力ない脈が感じられ、脈が速い)であり、一週間近く経過していることもあり腹診をすると臍(ヘソ)の右側にも圧痛がみられました。
鍼灸治療では肺の経絡の虚であり、免疫系の弱りの反応も見られました。
とても細い針を高速で回旋することによる手技を用いて、各ツボに対してアプローチしていきました。
施術後は浮いていた脈も落ち着き、お腹の圧痛も治まっていました。
翌日にもう一度同じ施術を行うと、午後にはスッと良くなりました。
時間が取れず治療を行えていなかったため、もっと早くやっておけばと少し反省しました。
慢性的に疲れが抜けづらい慢性疲労の状態が、実は免疫力低下に伴うウィルスの感染症が原因である場合もあります。
風邪を引きやすいことが思わぬ形で他の疾患の温床にもなりかねません。
現代の科学的なリサーチによっても、鍼灸治療が免疫力を大いに活性化させることが分かってきました。
また、免疫力と腸内細菌叢の関係性も広く知られるようになってきました。
日本の東洋医学は特に腹診を大切にすることから、免疫と腸の深い関わりも経験的に理解していたのだと考えられます。
世の中には免疫力を高める方法は様々ありますが、鍼灸治療もまた免疫力を高めるとても素晴らしいアプローチ法の一つだと、妻の風邪治療を行いながら改めて実感しました。