「鍼灸×ロルフィング®」第2回WS【筋膜と腰痛】開催しました

work shop

先日行った第2回ワークショップの内容をご紹介します。

指先の技術は、全身を効果的に使うことにより磨かれる

まずは施術時における身体の使い方に関する話から。
鍼灸師にとって、患者様にできるだけ余分な痛みを与えず、かつ効果的な施術を行えるかというのは、生涯のテーマだと思っています。
そのために、様々な流派やテクニックがあり、針を刺さずに皮膚に接触させる手技や、そもそも針先が丸くなっている形状により皮膚を貫通することがないテイ針と呼ばれる針を用いる場合もあります。

指自体をどのように使うのかというのは昔から伝承されてきた蓄積が豊富にあり、鍼灸の勉強会や講習会などでもそのことはよく触れられることです。
私は、加えて指というのは腕や上肢や体幹部の全体性の中の一部であると位置付けて、包括的にバランスをとっていく必要があると考えています。
陸上選手が脚のみを鍛えるのではないように、鍼灸師も全身の使い方を学び、その中に指の使い方を落とし込んでいくことが大切です。

ワークショップの前半では、針を皮膚に刺す施術を行っていく際の、更なる効果的な施術のための身体の使い方を、ロルフィングを織り交ぜた観点より一緒に身体や指先を動かしながら、お一人ずつハンズオンで学びました。

 

針による筋膜リセット:腰痛編

後半では、筋膜の基本的な知識と、筋膜がなぜ癒着を起こし動きの悪さとなって体に根付いてしまうのかをお話し、その後実際に動作を考慮した針による筋膜リセット:腰痛編を行いました。

鍼灸治療は伏臥位や仰臥位などの寝た姿勢で行うことがほとんどですが、生活習慣病とも言える腰痛などの更なる改善を試みる場合は、座位や立位による重力下でのアプローチが欠かせません。
それは腰痛の発生原因である姿勢を考慮したアプローチを行う必要があるからです。

座位や立位にて行う施術の長所として、重力下で体を保持している状態の、負荷が掛かっている筋膜に対して直接アプローチできること、すなわち症状にダイレクトに関わる筋膜のテンションがかかっている状態で直接アプローチできることにあります。
これは、筋膜の緊張状態をリセットするためには欠かせない考え方となります。

 

“ひびき”とは?

「ひびき」という現象をどのように考え施術に応用しているのかをご紹介しました。

「ひびき」とは2つに分けられると考えています。

1.患者様が主観的に感じる重だるさや針独特の感覚
2.施術者が自らの手の下にて感じる様々な感覚

この2つを定義づけることにより、臨床においての応用範囲が拡がり、施術者が感覚を磨いていく際にも有用であると考えています。

また、各メーカーによって針先の違いによる感覚の違いや、「ひびき」の違いを実際に体感していただきました。

同じ太さ、同じ長さの針でも、メーカーによって微妙に感覚が異なります。
それは、各メーカーの針先の形状の僅かな違いや、針の硬度の微差に由来しています。
ただ、この微妙な違いが、施術においては感覚の違いや入りやすさという観点で、大きな差となって現れます。
参加者の方々には、4つのメーカーの針を実際に打ち比べ、感覚の違いを体感していただき、また私が実際の施術でどのように使い分けているのかも学んでいただきました。

 

守・破・離

私はこれまで数多くの師匠の元で、鍼灸や整体を学ばせていただきました。
どの師匠もそれぞれ素晴らしい技術を持っており、初学者であった私は自らの未熟さを痛感しつつ、早く追いつきたいという思いで毎日を過ごしていました。

そして年月が経ち、当時の師匠達に追いつきたいという気持ちは、自分自身のスタイルを確立するという方向性に変わっていきました。

師匠達それぞれに身体特性があり、私自身にも特有の身体特性があります。
手の大きさや指の長さなどの解剖学的素因、柔軟性や巧緻性などの機能的側面、それぞれが組み合わさることにより個性を形成しており、それぞれの個性があるため、師匠の技術を完全にコピーすることは無理だと気づいたからです。

師匠の技術に追いつきたいとずっと背中を追いかけ続けるのではなく、自らのスタイルを確立する必要があることに気づくことにより、やっと師匠達の幻影を超えて前に進めるようになりました。

そのきっかけとなったのが、鍼灸施術においてもロルフィングの観点から全身の身体の使い方を見直すことでした。
私がWSにてお伝えしている内容は、自分自身が実践してきた中で一番効果的であった内容を凝縮したエッセンスです。
これは、身体的個性を超えた普遍的な身体の使い方だと考えており、それぞれは自分自身にあったスタイルを確立する前提となるものであると考えています。

この基本的な身体の使い方をベースにして、専門性を持った独自の手技を上乗せしていくことで、鍼灸技術の向上や感覚の鋭敏化がもたらされ、それぞれの身体特性にあった独自の施術を構築していく大いなる参考になると思っています。

 

参加者のご感想

以下、いただいたご感想です。

今まで指先の技術ばかりにとらわれていましたが、刺鍼手技の身体の使い方という視点は大きな気づきになり、練習をする希望が見えました。

自分が施術する時の身体の緊張感や、普段からの姿勢の悪さに悩んでいたのですが、「僧帽筋と下後鋸筋」「胸骨」「舌骨から頸椎」の脱力やラインの意識により、驚くほど体がシャキッとなりました。それとともに、呼吸の流れや視野の広がりを一層感じられるようになり、短時間で大きな変化を得ることができました。
先生のご説明も理解しやすくすんなり納得できて、今回のWSの内容を忘れることなく実践していけそうです。

 

まとめと座談会予告

昨年12月の開催に続き、今回のWSも参加者の方々と密度の濃い充実した時間を過ごすことができました。

参加者の方々のご要望も踏まえて、来月〜再来月にかけて、WS形式ではなくもっと気軽に参加していただける座談会を開催しようと考えています。

「鍼灸とマインドフルネス : 脳科学において解明され始めた鍼の効果、他(仮)」

一般の方の参加も受け付けさせていただく予定ですが、少し専門的な内容となりますため鍼灸学生の方や鍼灸師の方が主な対象になるかと思います。

詳細が決まりましたら、再度ご案内させていただきます。

楽しみにお待ちください。