【最新科学が解き明かす鍼灸の未来】カジュアルトーク開催しました。
先日行ったカジュルトークの内容をご紹介します。
マインドフルネスという概念が持ち込まれて、改めて瞑想が見直されてきています。これまでのように如何に多く如何にたくさんのことを成し遂げるのかという足し算へのカウンタームーブメントもあるのでしょう。
生産性や創造性のある活動を行うために、如何に過剰な思考を取り除くのかという引き算を試みる社会的ニーズの高まりを感じています。
このような時流も踏まえて、痛みや疾患の「治療」でもなく、心地よい「リラクゼーション」でもなく、心身を本質的に休ませることができるような「深い休息」のためのセッションを行うに当たって必要なことを、大きく分けて前半と後半の2部構成としてご紹介いたしました。
カジュアルトーク内容
前半は、鍼灸と瞑想とfMRI。
・瞑想時に感じる深い静けさや休息感と鍼灸施術がどのように関わっているのか
・瞑想時に抑制されるデフォルトモード・ネットワーク(DMN)とは何か
・なぜ鍼灸施術は効果的にDMNを整えることができるのか
・どのツボが特に効果的に作用するのか
・DMNを整えることが、なぜ慢性痛の改善に繋がるのか
・脳の働きが、五行の相生相克に酷似しているとは何か
後半は、マインドフルな鍼灸施術「深い休息」のためのセッションのポイント。
・身の回りにある同期現象
・クライアントと共鳴することによる、深い休息への導き方
・空間と共振し、如何に自己治癒力が発揮される場を作りあげていくのか
効果的な治療のためには、内的イメージを養う必要がある
鍼灸治療は氣の医学だという考え方に、私自身は全面的に賛成です。
では、氣の医学とは何なのでしょうか?
それは、エビデンスベースの西洋医学が再現性を重要視することとは対極にある、施術者個々の内的イメージが反映されるとても特殊性の高い体系であるということだと考えています。
では、氣にアプローチし、氣の医学である伝統鍼灸を実践するため、如何に内的イメージを養えば良いのでしょうか?
それは、東洋哲学や鍼灸医学の源流である古典を学ぶことだけではないと考えています。(私自身は陰陽五行哲学を生涯かけて探求していきたいという立場です。)
個々の内的イメージ力が養われるのであれば、古典に関わらず人体の不思議に関わる学びを貪欲に探求すべきだと考えています。特殊性が非常に高い体系であるため、人体の叡智への探求を通して養われる内的イメージを軸に、各自が創意工夫の元施術を行えばよいと考えております。
神経科学の観点を学ぶことによるメリット
実際の臨床において壁にぶつかった時、何を学べば良いかの一つの選択肢として、知識の集積が進む神経科学などのエビデンスがあると考えています。
鍼灸を行なった時に生体内で起きている変化を皆が共有できる概念で共用するべく、世界の研究者達が協力して日々アップデートしようとしている姿勢にとても好感を持っています。伝統鍼灸の古典を読み込むことと似ている感覚が、エビデンスベースの論文を読み解く感覚と似ているのです。
「読み解く」というのは、考察や結果から理解できること以上に、その解き明かされた作用を踏まえて関連疾患や類似疾患に如何に応用していくのかを導き出すことだと考えており、このプロセスこそが伝統鍼灸の古典を現代の疾患に応用していくことに酷似しているのです。
つまり、エビデンスベースの考え方を学び読み解くことは氣の医学の軸になる内的イメージを結果として養うことに繋がるのです。また、再現性を期待した鍼灸を行うのみならず、独自のオリジナルのメソッドを作り上げる材料にもなり得ると考えています。
私自身、「臨床における効果性=内的イメージ×経験×自信」と定義づけており、施術者独自の内的イメージを如何に豊富にし、そのイメージをどれだけ確かな感覚としてアプローチし動かすことができるのかに尽きると結論付けています。
養われた内的イメージをしっかりと施術に反映させるためには、やはり東洋医学の哲学体系を学び、伝統鍼灸の作法を修練し、鍼灸術を研鑽し続けることも必須と言えるでしょう。
感想
・鍼灸への科学的アプローチのお話と服部先生の経験をもとにした感覚的なお話が全く違う観点でとても面白いと思いました。 また日本では鍼灸は「治療」を求められるのに対して、ヨーロッパでの鍼灸は「心身を整える、メンテナンス的な要素」を求められているというのが印象に残りました。
・治療でもリラクゼーションでもない深い休息がとても気に入りました。
・巷でよく聞くようなありふれた鍼灸の話とは別のアプローチで施術を考えられていて、とても興味深かったです。脳の機能と鍼灸、同期と鍼灸などとても面白かったです。
・人間の治療において表面的でないものの形式をどのように勉強してよいか分からなかったところ、色々な情報を知れたのでやっと入り口の扉を開けることができた気がします。
まとめ
今回は初めてカジュアルトークと題した座談会を開催でき、皆様から好評をいただき継続開催の声を多数いただきました。
今後も内容を充実させながら、エビデンスベースの知見を痛みに如何に応用するか、深い休息のための施術のアップデートなど、定期的に開催していきますのでご期待ください。