Sさんとのロルフィングセッション 4〜7

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セッション1〜3で、胸郭部や喉における緊張、足底の加重バランスの偏り、横隔膜と呼吸の関係性などへのアプローチを行いました。

同時に、身体の使い方の再学習と空間の認識のしかたなどの感覚の再構築も行いました。

セッション 4〜7:コア

セッション4〜7はコアと呼ばれるセッションとなります。

コアとは何か?

解剖学的に考えると、深層部に位置する組織へのアプローチを行うことを指します。
そして、深層部に位置する組織に付随している、内臓感覚や内側の空間認識、さらには考え方や価値観などの癖が体深くに根付いたパターンとして見出される部分でもあります。

コアのセッションにおいては、骨盤底やお腹の深部や口腔内など、普段はなかなかアプローチしない部位にしっかりと施術を行います。
この部分こそがその方の根強い癖を形成しているポイントになっていることが多いためです。

そのポイントを見逃さないように、また効果的にリリースできるような、”レシピ”と言われるセッションの順番をデザインしたアイダ・ロルフさんには敬服せざるを得ません。

ロルフィングの4つのコンセプトをもとに、コアにおけるSさんのポイントをまとめました。

4つの
コンセプト
Naoki Rolfing® Studioにおける
コンセプトの解釈
Sさんの事例
Structure 「筋膜が形作る体」

  胸内筋膜や縦隔、咽喉口腔
  骨盤腔

Coordination 「盲点となっている感覚の再学習」  仙骨と軟口蓋
Perception 「身体への気づき方を高めること」  内側の空間認識
Meaning 「変化の先に新たな意味を見出すこと」  体の断捨離

仙骨がスイッチ

Sさんにとって、仙骨を活性化させることはとても大きな変化のきっかけとなりました。

仙骨は体重を支えるための強靭な靭帯構造によって固められているため、ともすると動きがなくなり、必要以上に固まることにより感覚の盲点となってしまうことが多い場所です。

仙骨周りの靭帯や筋膜組織を入念にリリースして仙骨の動きを出した後、失われていた仙骨感覚の再学習を行うために仙骨の重さを感じていただきながら、仙骨と体の他の部位を繋げるように深部感覚を活性化しました。

 

感覚の偏りは、長年の生活習慣の中で形成されます。

10年、20年、30年、、、、、今の自分にとっての当たり前の感覚は本来の当たり前ではなく、しかしそれが当たり前の感覚だと錯覚するほどに、感覚の麻痺が身体に根付いているということです。

足裏や骨盤底や仙骨の感覚は、その代表的な例となります。

膝過伸展があるSさんは、足裏〜下肢の内側の感覚が抜けていました。
足裏の外側を主に使って生活しているため、実際に内側を活性化しようにも、一体どうやってよいのかが分かりません。

そして、足裏の感覚が希薄な場合、往々にして仙骨の感覚もあいまいになります。
これはSさんに限った事例ではなく、ほとんどの方に当てはまる傾向です。

「盲点」に気づくこと、「盲点」を感じられること、「盲点」を使えるようになること、「盲点」を自分の新たな感覚として根付かせること、の4つの再学習のステップを経る必要性があるのです。

Palintonicity

ギリシャ語のPalintonosが原語となる概念です。
Palintonosとは「相反する2極の対話」を意味します。
これがロルフィングに応用されて、Palintonicityとなると「相反する二つの方向性を意識する」となります。

ロルフィグにおいては重力に対してどのように身体を位置づけているのかで、体のバランスが取れているかどうかを見ています。

重力に対してバランスが取れていない体の部分というのは、潰れていたり圧縮されていたりするように見え、その部分では身体の内側にも十分な空間が形成されていないと考えています。

内側の空間の不形成を把握するために、実際のセッションにおいては筋膜や他の膜組織の張力(各部が均等に引っ張り合いをしている)が短くなっている部位を探していると単純化することもできます。

極論すると、体のバランスが崩れるのは筋膜組織が短くなっている部位が存在するためと言え、 ロルフィングによる理想的な状態とは、体を伸張した状態をキープしながら最適なバランスを見出し続けることだと言えます。

この伸張した状態のキープを実践していく上で、Palintonicityという考え方が効果的となるのです。

Sさんにおいて例をあげると、セッション4にて仙骨の感覚や重さを取り戻し、セッション7において口腔〜頭の内側を上方へと抜けるベクトルを感じることができました。

この上方に抜けるベクトルというのは、よく「頭の上を吊られているような感じ」や、「頭のてっぺんを引っ張られているような感覚」、と指導され表現される感覚と同義です。

ポイントは上方に抜ける上へのベクトルと仙骨の重さという下へのベクトルを同時に感じることができたところにあります。

上下という2つの相反するベクトル : Palintonicity  をコアのセッションにおいて感じられたことが、最適なバランスを見つけるため「体の断捨離を行うため」の重要なエッセンスとなったのでした。