効果的な鍼を打つために 後編

Contemporary ballet
Photo by WikimediaCommons – Two dancers / Adapted.

前回の「効果的な鍼を打つために」の後編として、今回は具体的に何を意識していくと良いのかをご紹介します。
ロルフィングセッションでは、ピアニストなどの音楽家やバレエダンサーなどの表現者とのセッションも行っています。

ピアニストは指だけで演奏しているわけではなく、またバレエダンサーは脚だけで踊っているわけではありません。

身体の様々な部位が絶妙に連鎖することによって、最大のパフォーマンスが発揮できるのです。

これは鍼灸師が鍼を打つ際にも、同じことが言えるかと思います。
指先だけで鍼を打つわけではなく、骨盤や胸郭や頭などの連鎖の調和が確立されてこそ、腕や手の動きが生きてきます。
音楽家や表現者とのロルフィングセッションの中には、鍼灸師にも応用できる身体の使い方のポイントがあります。
その使い方のポイントとは主に以下の3つに集約されます。

1、頚の使い方

1日の施術が終わると、頚の付け根は疲れていませんか?
身体に力みがある時は、必ず後頭下筋群の緊張が伴います。

後頭骨−頚椎1番−頚椎2番のユニットを、重力に対してニュートラルにできるかどうかが特に重要なポイントです。
頭〜頚を固めず柔らかくしておくことは、人間の姿勢制御システムを効果的に使う最も大切なことです。

2、腕と胸郭(G’)の使い方

鍼を打つ時に、肩は上がっていませんか?
肩が上がってしまうだけで、脱力を行うことはとても難しくなります。

楽にしているつもりでも筋肉には不必要な力みがあり、外側の力みは内側の緊張にも繋がります。

施術中の心持ちにも焦りや緊張が生まれ、気もスムーズに流れません。
頭〜頚を固めず柔らかく、広背筋や前鋸筋を効果的に使えるかどうかがポイントになります。

3、骨盤(G)の使い方

骨盤は後傾しすぎていませんか?
骨盤の後傾があると、身体の前側と後側の膜連鎖のバランスが悪くなります。

腹直筋から胸鎖乳突筋にかけて、そしてそこから後部頭皮筋膜にかけてが短縮し、頭〜頚が前に出てしまいます。
頭〜頚の前方固定は後頭下筋群の緊張にも繋がり、1で紹介した頚部の緊張を誘発し、全身性の力みへと繋がっていきます。
丹田に意識を置くことと同時に、骨盤をしっかりと立てるために背腰部と腕とが連鎖して動く意識も大切になります。

1、2、3これらの3つのポイントは身体に余分な力が入っていないかどうかを見る指標となります。
施術者の緊張は、即患者様の身体をも緊張させてしまいます。

緩ませたければ、まずは自分が緩む必要がある、という格言にもつながるでしょう。
この緩みの中に、力みとは異なる活性化した身体の使い方のバランスを見出すことが最も需要なポイントです。
活性化と脱力のバランスという、陰陽が調和した身体の使い方が、鍼を打つ際の効果性を高めるコツだと考えています。