父の帯状疱疹後神経痛の治療を通して
実家の父、帯状疱疹に罹る
仕出し業を営む私の両親は、早朝から夜遅くまで、ほぼ年中無休のような生活を続けて、まもなく50年にさしかかろうかとしています。
父も70歳を過ぎ、体力の衰えも徐々に見られるようになってきた先日、歯の治療による抜歯後に帯状疱疹に罹りました。
年来の蕁麻疹体質でもある父は、初めはいつもの蕁麻疹かと思ったそうですが、肩~腕に掛けて帯状に広がった湿疹を見て、慌てて皮膚科を受診したところ、帯状疱疹との診断を受けました。
早期の皮膚科受診と抗ウィルス薬を中心とした適切な服薬の甲斐もあり、ほどなくして皮疹は鎮静化したのですが、皮疹が治り始めて1週間頃に、皮膚のピリピリとする感覚異常が気になり始め、上肢の挙上障害が現れ始めたとのことでした。
私が実家に帰省したのは、皮膚科にかかり、ちょうど3週間経過した頃でした。
湿疹部位と感覚異常の部位を確認してみると、頚椎5番6番の神経節を中心に水痘・帯状疱疹ウィルスが猛威をふるった跡が見て取れました。
前腕部と手の甲には、触れただけで、痛いような熱いようなという感覚異常があり、腕を60度くらいしか上に挙げられない挙上障害も見られました。
帯状疱疹による知覚神経・運動神経障害
帯状疱疹の発症部位は、統計的に、胸髄神経領域が(51%)と最も多く、腰仙髄(18%)、頸髄(11~12%)、三叉神経(19%)となっており、父の場合は比較的少ない頸髄領域に発生したと考えられました。
また、帯状疱疹に由来する症状は、通常は知覚神経の障害によるものがメインとなるのですが、父の場合は運動神経の障害も同時に伴っていました。
早めに治療を行わないと帯状疱疹後神経痛に後々悩まされる可能性が高くなると考え、初日は免疫力を回復させる目的と患部の炎症を発散させる目的にて、頚神経節からは少し離れた部分への治療で様子をみることにしました。
治療翌日、あまり症状の変化は見られなかったため、頚椎症などに見られる神経根症の治療、すなわち頚神経節への直接的な治療に切り替えました。
私が日頃行っている神経根症の治療では、知覚神経や運動神経をコントロールしている毛細血管の状態を把握することをとても重要視しています。
なぜなら、神経とは脳や脊髄からただ伸びているわけではなく、要所々々では、豊富な毛細血管により酸素や栄養素の補給と老廃物の代謝が活発に行われている、水々しいチューブだからです。
今回は水痘・帯状疱疹ウイルスにより引き起こされた神経節の炎症が元になり、障害されている頚部の知覚神経と運動神経をコントロールしている毛細血管に瘀血(深部の血の滞り)、神経周囲の組織には水滞(代謝されていない水の滞り)もあると考えました。
神経節周囲の瘀血と水滞が、正常な神経の流れを阻害している原因になっているとし、頚椎5番6番への直接的なアプローチと瘀血と水滞を流すための手のツボも同時に用いました。
父の施術を通して感じたこと
父は、施術中から「とても良い感じがする」と話しており、施術が終わった後には皮膚の知覚異常は消失し、腕も90度くらいまでスムーズに挙げることができ、頑張れば150度くらいまで挙げることができるようになっていました。
父にとっては自分の症状が改善したことに加え、2度の施術で大幅に症状が改善し、感慨もひとしおだったようです。
日頃なかなか深い話をする機会もない父と私ですが、治療を通して話をしていると様々な思いに触れることができました。
父と職種は違えど大いに気づきのある有意義な時間を過ごすことができました。