ロンドンで施術した著名人とプライベートクリニックにしようと思ったきっかけ

 

st paul

みなさんは鍼灸と聞いて、どのようなイメージをお持ちでしょうか?

鍼を一度も受けたことがない方からは、怖い、痛そう、などのネガティブなイメージをお聞きすることがよくあります。 
日本人の鍼灸治療受診率は人口の6%しかない、という話も聞いたことがあります。
東洋医学とはいえ、そして街なかには数多くの鍼灸院が目につくにも関わらず、日本での鍼灸普及はまだまだ発展途上なのを感じています。

今日は、一転、私がロンドンの治療院で働いていた時のお話をしようと思います。
ロンドンの中心地に位置していた鍼灸治療院には、いったいどのような患者様が来院されていたのか、いくつかの症例をご紹介します。

ロンドンで出会った著名人

ピアニストMr. S.H

懇意にしていただいていた、世界的に有名なピアニストがいらっしゃいました。
彼の奏でるラフマニノフやパガニーニ協奏曲は、作曲者と比較されるような素晴らしい賞賛を集めていました。
彼が施術を受ける目的は、手や腕の過緊張を緩めることですが、同時に施術を受けていると何らかのインスピレーションが湧いてくる、というのです。
そして、施術が終わった後の緩んだ感覚が、自身が重要視している最もシンプルにピアノに向き合う境地に必要なのだ、としているのでした。

日本人俳優 M.I さん

日本でも有名な俳優 M.I さん。
ご縁があり、ロンドン講演時の1週間、ご本人はもちろん同じく女優である奥様や他の役者の方々の施術を担当させていただく機会に恵まれました。
翌日の講演に向かって、長年酷使してきた部分を日々丁寧にケアしながら、その先5年10年と長く現役でいるための毎日を過ごしている真摯な姿が、鮮明な印象として心に残っています。

日本人金融ディーラー

金融の街、ロンドン。
中心部にあった治療院には、日夜信じられないような大金を動かしている金融ディーラー達が、極度のストレスを抱えてやってきました。
その中でも、世界最大手の投資会社に勤める彼女は、日本人でありながら驚異的な数字を叩き出すトップ1%の常連でした。
彼女への鍼灸施術はいつも、柔らかく細い鍼を使った繊細な手法を用いたものでした。
10分ほど経つ頃にはいつも決まって、仕事を現実社会に置いていくかのように眠りの世界に落ちていきました。
施術が終わって目が醒める頃には、気分はすっきり晴れやかで、眉間のシワが伸びているのが印象的でした。

 

「治療」としての鍼灸、「リラックス」としての鍼灸

このようにロンドンでは、日本にいたらお目にかかる機会がなかったであろう方々の施術をさせていただく機会に恵まれました。

世界のトップレベルで活躍されている方と1対1で向き合い、満足いただけるような施術を提供する、という経験は、何ものにも代え難い貴重な成長の期間であったと、今でも時々思い返します。

また日本では、鍼灸は痛みや不調を取り除く「治療」として考えられている側面が大きいように感じますが、海外では治療に加え、リラックスや精神の調和のために鍼灸を捉えている方が多いようにも感じました。

私自身も、海外に出るまでは「治療」としての側面しか見ていなかったかもしれません。
しかし、ご紹介したような方々への治療はまさに、リラックスや精神の調和のための側面が強く、鍼灸の持つ可能性に私自身が気づかされた部分も大きかったように思います。

リラックスを促すためには、様々な要因が必要になってきます。
もちろん一番大切なのは技術ですが、その効果を最大限に発揮させるためには、技術以外にも大切なことがある、ということを学んだのも、海外での経験で得た一つの財産になっています。

 

プライベートクリニックにしようと思った理由

そしてロンドンでの経験は、自分自身のクリニックを持った時には、1対1の完全プライベートな空間で患者様と向き合いたい、と思うようになるきっかけにもなったと感じています。

以前の記事にも書きましたが、人は何か特別な能力がなくとも、5感、ひいては第6感を使って様々な情報をキャッチしています。

また、自分の意思とは無関係に様々な思考が降っては湧いてくるものです。

『隣の人や待っている人に私の相談内容が聞こえているのではないだろうか…』
『先生、鍼を刺したきりどこへ行ったのだろう…他の人にかかりきりだ』
『今日は患者さんが多くて忙しそうだ。全然話ができなかった…』

治療院であっても病院であっても、このように思ったことはないでしょうか。

このように、様々な思考が降っては湧いてくる状況では、脳は休まるどころか常に忙しく働き続けています。

これでは、リラックスできないだけでなく、治療としての効果も半減します。
痛みやしびれは、その部分だけではなく、脳に作用している部分も大きいからです。

当院に初めてこられた場合も、初めは緊張や慣れない場ということもあり、リラックスを感じていただけない場合もあるかもしれません。

しかし、何度か来ていただくうちに、必ず、他とは違うご自身の状態を感じていただけることでしょう。

人によって世界の感じ方は様々です。

うるさい場所でも平気で眠れる方もいれば、少しの物音でも敏感に反応してしまう方もいます。
満員電車で毎日たくましく通勤できる方もいれば、満員電車に乗ると具合が悪くなってしまうという方もいます。

しかし繊細であることは、生きづらさがある一方で、多くの喜びを享受できる可能性も無数に秘めています。

そんな方にこそ、ぜひ当院にお越しいただきたいと切に願っています。